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新型出生前診断(NIPT)の指針改定案とは?意見公募に回答しましょう

NIPT

妊婦の血液から胎児の染色体異常を推定する新型出生前診断(以下、NIPTという)について、2019年3月2日、日本産婦人科学会(以下、日産婦という)が新指針案(実施施設の改定案)を決めました。

実施施設を拡大するという案です。

出生前診断については、命の選別につながるなど国民の中でも議論の分かれるテーマですよね。ただ、妊婦さんからのニーズも高い検査です。

報道ではNIPTを提供する施設を安易に拡大すべきでないといった議論が目立っていますが、現段階では指針は案です。日産婦は一般向けにこの新指針案について意見公募しているところです。

出生前診断は議論が分かれるテーマですが、本記事ではその是非には触れません。NIPTとはどのような検査で、日産婦の改定案とはいかなるものかを紹介します。

改定案の内容を理解した上で積極的に意見公募(アンケート)に回答しましょう!

そもそも出生前診断とは?

出生前診断とは、出産の前に赤ちゃんの状態を調べる検査です。染色体異常や生まれつきの病気などを調べることができます。日産婦では以下のように基本的な概念を説明しています。

遺伝学的検査とは,ヒト生殖細胞系列における遺伝子変異もしくは染色体異常,先天異常に関する検査,あるいはそれらに関連する検査であり,染色体検査・遺伝生化学的検査・遺伝子診断,検査等が該当する.妊娠中に胎児が何らかの疾患に罹患していると思われる場合に,その正確な病態を知る目的で前項の検査を実施し,診断を行うことが出生前に行われる遺伝学的検査および診断の基本的な概念である.

出典元:日本産婦人科学会2013年6月22日「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解

簡単に要約すると、ダウン症などの染色体異常や生まれつきの病気などを調べる検査。おなかの赤ちゃんに何らかの疾患があると疑われる場合に、その正確な状態を知ることを目的とした検査ですね。

健康状態をあらかじめ把握しておき、赤ちゃんに適した分娩方式、時期を検討したり、生まれる前から治療をする。また、生後の環境を整える準備ができるというメリットがあります。

一方、検査の結果次第で中絶を選択する場合もあることから「命の選別につながる」とネガティブな意見もあります。

出生前診断の種類とNIPTの内容

診断には確定診断を目的とする検査と、非確定的な検査があります。

確定検査には羊水検査や絨毛検査があります。

非確定検査には、母体血清マーカー検査、胎児超音波検査、そして新型出生前診断とされるNIPTがあります。

今回は議論となっているNIPTについて説明します。

NIPTとは?

妊婦さんの血液の中に含まれている、胎児のDNAを最新の医療技術を用いて検出し、妊婦さんからの採血で胎児が13、18、21番染色体の数の異常持っている可能性が高いかどうかを調べる方法

※兵庫医科大学病院産婦人科 「無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)とは」 

無侵襲的出生前遺伝学的検査(Noninvasive prenatal genetic testing)の略です。
母体血を利用して赤ちゃんの遺伝学的検査を行う方法を言います。
2011年、米国で母体血を用いた赤ちゃんの染色体検査(母体血胎児染色体検査)が臨床検査として利用可能になっています。
日本では、日本産科婦人科学会の指針により臨床研究として認定された施設で実施されます。※NIPTコンソーシアム NIPTとは

NIPTは2013年に臨床研究として施設を限定した上で導入されました。現在の認定施設数は92施設、2018年9月までの検査実績は65,000件以上と需要がある一方で無認可施設も増えています。

NIPTのメリットとして、妊娠10週前後から検査が可能。血液検査(無侵襲)のため、検査による流産の危険性もないことがあげられます。

あくまでも非確定検査のため、陽性と判定された場合には羊水検査のなどの確定検査が必要となります。ただし、陰性の場合は染色体異常の可能性は極めて低いと判断されます。

NIPTの費用はどれくらい?

医療機関によって異なるものの、検査前の遺伝カウンセリング料などを含めると約20万円程度かかります。自費診療になるため高額です。

検査費用 母体血胎児染色体検査(NIPT)(臨床研究) 約180,000円

※国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 周産期遺伝外来 よくあるご質問より

改定案における主な変更点

現行制度

  • 日本医学会が実施施設を認定(大学病院など)
  • 認定施設には産科医・小児科医が常勤。どちらかは臨床遺伝専門医であること
  • 認定遺伝カウンセラー等の在籍が望ましい
  • 検査前後に遺伝カウンセリング

改定案

  • 日産婦が基幹施設(現・認定施設とほぼ同じ)と連携施設を認定
  • 連携施設は開業医など研修を受けた産婦人科医でも対象
  • 検査前に「検査の説明と情報提供」
  • 陽性の場合に基幹施設で遺伝カウンセリング

改定案では実施施設を拡大し、研修を受けた産科医が単独でも可能となります。

これにより、小規模な施設や開業医でもNIPTを提供できることになるため、検査を希望する夫婦にとっては検査が受けやすくなる一方で、安易にNIPTを拡大すべきでないといった議論を呼んでいます。


改定案の背景

背景を抜粋して自分なりに要約すると以下の内容となります。

  • NIPTですべてがわかるわけではない。追加で詳細な検査をしないと確定診断は得られないこと、異常から推定される隔たりを持つ子供たちがどう育つのか、また妊娠中にわかった場合どのような選択肢があるのか等を正しく理解する上でNIPTを受ける必要がある。
  • そのため、現行の指針では、日本医学会連合が認可した施設のみ(提供できるのは臨床遺伝専門医と認定遺伝カウンセラー)と限定
  • しかし、認可が下りる施設は少なく、一部無認可施設が指針に反して検査を始めた
  • 誤った情報をもとに妊娠を諦めようとする妊婦もいる
  • そこで、日産婦は現状の認可施設と連携することで追加検査やその後の経過に対応できるようにすることでNIPT産院を広げることを提案

改定案の内容

改定案の内容は、(1)はじめに、(2)検討の経緯、(3)NIPTの問題点、(4)NIPTに対する基本的考え方、(5)NIPTを行う場合に求められる要件、(6)NIPTに対する医師、検査会社の基本、(7)認定登録制度の確立から構成されます。

そのうち、個人的にいくつか重要と思った点を抜粋し要約します。

もも母ちゃん
もも母ちゃん
あくまでも一部です!

NIPTの問題点

  • 妊婦が十分な認識を持たずに検査が行われる可能性のあること
  • 検査結果の意義について妊婦が誤解する可能性があること
  • 胎児の疾患の発見を目的としたマススクリーニング検査として行われる可能性があること

NIPTに対する基本的考え方

  • 出生前診断は高度な専門性と結果から導かれる社会的影響を考慮すると臨床遺伝学の知識を備えた医師が説明にあたるべき
  • 現在はそれが徹底されているとは言い難い
  • NIPTの検査前の十分な説明と遺伝カウンセリングで適切な情報提供することが不十分
  • 検査後の遺伝カウンセリングを行う体制にも不備がある
  • 臨床遺伝額の知識を備えた専門医が遺伝カウンセリングを適切に行う体制が整うまではNIPTを広く一般産婦人科に導入すべきでない
  • しかしながら、妊婦が妊娠期間中に様々な不安に苛まれ、妊娠の結果を予測しうる情報を可能な限り入手したいのは必然
  • NIPTは簡便、無侵襲、高精度であり、希望する妊婦は少なくない。妊娠にまつわる様々な不安を払しょくしたいという思いは尊重されるべき
  • NIPTへのアクセスに居住地域や就業時間など妊婦の置かれた条件によって著しい差が生じるのは好ましくない
  • NIPTは十分な遺伝カウンセリングの提供が可能な限られた施設において限定的に行われるにとどめるべき
  • しかし、検査を望む妊婦が適切な説明に接し、検査の意義を十分に理解したうえで検査を受けることに支障のない状況を整備することも考慮されなければならない



NIPTを行う場合に求められる要件

  • NIPTを行う施設は「基幹施設」もしくは、その「連携施設」
  • 基幹施設には、産婦人科専門医(臨床遺伝専門医が望ましい)、出生前診断に精通する小児科専門医(臨床遺伝専門医か周産期専門医が望ましい)がともに常勤していること(少なくともどちらかは臨床遺伝専門医であることを要する)。認定遺伝カウンセラー在籍していることが望ましい。
  • 連携施設には、産婦人科専門医が常勤し小児科専門医と常時連携。産婦人科医は臨床遺伝専門医以外でも臨床遺伝に関する研修の修了が認定されていれば要件を満たすものとみなす
  • 対象となる妊婦は次のいずれかに該当。超音波検査・母体血清マーカーで染色体異常の可能性ありと示唆染色体異常を有する子を妊娠したことがある、高年齢妊婦両親のいずれかが均衡型ロバートソン転座を有し、胎児が13トリソミーor21トリソミーとなる可能性
  • NIPTの前後に医師が妊婦およびその配偶者等に説明し、理解を得る(対象となる染色体異常の最新の情報、NIPTの位置づけ、結果の解釈、次の段階の選択肢、妊娠中断のリスクなど)

NIPTに対する医師、検査会社の基本的姿勢

  • NIPTについて医師が妊婦に積極的に知らせる必要はない。妊婦が説明を求めたら適切に情報提供する
  • 医師はNIPTを妊婦に安易に勧めるべきではない

さいごに 意見公募(アンケート)に回答しましょう

アンケートはこちらのページから回答できます。

回答項目は11項目(選択回答、一部自由記述あり)で数分で回答できる分量です。

今後のNIPTの在り方を決める重要な改定案です。

当事者である妊婦さんやその家族、出生前診断の経験者など、当事者としての意見をどんどん届けることが大事ですよね。

ぜひ、ご検討ください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。