育児家事の負担が親のひとり(多くはお母さん)にのしかかる「ワンオペ育児・家事」。この記事では、ワンオペ状態から脱し、夫婦で育児・家事を分担していくために必要な「育児・家事の見える化」について紹介します。
育児・家事をひとりで抱え込むことで精神的にも肉体的にも疲弊している方も多いのではないでしょうか。ワンオペ状態というのはお母さんが疲れてしまうばかりでなく、子どものためにも良い状態ではないですよね。
それは共働きでなくても、育児休業中や専業主婦の家庭であっても同じです。1日中子どもから目が離せないなかで家事をこなすことはとても疲れます。「できれば夫に早く帰ってきてもらって家事を少しでも分担してほしい」、「子どもを少しの間でいいから見ていてほしい、せめてゆっくりトイレに入りたい」、でも実際は「わたしばっかり…」というご夫婦も多いのではないでしょうか。
その悩みの解決のヒントとなるのが「育児・家事の見える化」です。夫婦で一緒に見える化をするためのタスクの洗い出しをするだけでも、お互いが育児・家事に対する意識を確認することができ、家事に不慣れな夫も家事に参加しやすくなります。
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ワンオペ育児の現状と要因
育児をしながら日々の家事を1人で抱えるには負担が重すぎます。見える化をする前にそもそもなぜワンオペ育児・家事がこれだけ問題となっているのか考えました。
要因として考えられることは、夫である男性の長時間労働、性別による伝統的な役割意識などです。
夫の長時間労働
これはもう、物理的・構造的な問題ですね。労働時間の国際比較でも日本は常にトップクラス、昔も今も、日本人は働きすぎと言われます。わが家でも夫の繁忙期には、朝早く家を出発して帰宅は深夜ということも珍しくはありません。
こんな状況では妻としても「家事育児をやってもらいたい。でも仕事で疲れている夫に頼むのはちょっと申し訳ない」、「低賃金だから働いてもらわないと家計が回らない。残業は仕方ない、家事育児を頼むのは諦めよう」と思うこともあるでしょう。夫も「本当は家事も育児もやらないといけないことはわかっている。でも平日は疲れ切って無理」と思うこともあるでしょう。気持はわかります。
いまの日本では男性の育児休業取得率も女性から比べたらごくわずかですし、夫の長時間労働、低賃金、休みの取りづらさなど、夫婦の意識だけではどうにもならない問題もあります。だからこそ働き方改革が叫ばれているわけですね。
性別による伝統的な役割意識
昔よりは男女平等に向かっているとはいえ、「男は仕事第一、女は家庭」という役割意識はいまだに根付いています。「夫の方が年収高いのだから、家事や育児を妻が多く担うことは合理的だ」と思っている日本人のなんと多いことか。。そのせいでしょうか、企業の管理職は圧倒的に男性が多く、非正規雇用に就く女性が多いという現状です。
この役割意識が潜在的に存在することで、夫の育児家事参加率の低さにつながっているのは間違いないでしょう。
脱・ワンオペに向けて、夫婦で意識の共有をしましょう
夫に家事のスキルやマネジメント能力がないと、妻が家事育児の主導権を握り、夫に家事を頼むという関係が確立されます。すると、お互いの意識に差が生まれます。妻は夫に対して詳細な指示を出すことが面倒になったり(いちいち揉めたくないし)、夫はいつまでも家事や育児は「手伝う」ものという認識のままです。
妻が夫に頼みやすい家事として、ごみ出し、食後の片付けなどがあると思いますが、以下のようなすれ違いもあり得ると考えます。
すれ違いの例(食後のあと片付け)
- 夫の意識・・・え~と、食器をシンクに持って行って、テーブルを綺麗に拭こう。洗った方がいいのかな?でも乾いたお皿もまだしまっていないし、使ったお皿と調理用具はシンクにおいておこう。
- 妻の意識・・・まず乾いた食器をしまってから食器を洗って、なべやフライパンを洗い、テーブルを拭く、シンク回りの水はねを拭く。余った食材(おかずやごはん)はタッパーに入れて冷凍するところまでやってほしいんだけどな。
すれ違いの例(ごみ出し)
- 夫の意識・・・明日の朝になったらごみ袋をごみ収集所へ持っていけってことだな。
- 妻の意識・・・本当は各居室のごみ箱、シンクの排水溝・三角コーナー、お風呂の排水溝などからごみを回収。ごみ箱等に新しい袋をセット。その上でごみ収集所へ持ちこんでほしい。でも自分がやった方が早いし私が準備しておくか。
このように、ごみ出しや食事の片付けでさえ、夫が考えるやるべきことと妻が夫にお願いしたいことにすれ違いが起きてしまうことがあります。夫がこれを当たり前と考えてしまうと、妻に御膳立てされた仕事しかしなくなります。それじゃ家事をやっているとは言えませんよね。
このような状態に陥らないためには、そもそも育児家事にはどのようなタスクがあるか夫婦で共有することが重要です。夫にしても「やりたくなくて家事を丸投げしているわけではなく、何をすればいいのかよくわからないから言い出しにくい」という人もいるからです。そのうえで、どのように分担したら効率的か、一方に負担が偏ることがないか、夫婦で話合う機会が必要と考えます。そこで役立つのが育児・家事の「見える化」です!
家事・育児の「見える化」の方法
ここでは、「見える化」の方法について説明します。必要なプロセスは①タスクの洗い出し、②タスクの時系列化、③現状の担当を明確化、④タスクの一覧化(見える化)です。
①育児・家事のタスクを洗い出す
思いつくタスク(やること)を書き出します。タスクの内容も夫婦がわかればよいです。何を書けばいいのか思いつかない場合、朝起きてからの行動を思い返すと書きやすいです。自分のための行為ではなく、子どもや夫のための行為であれば育児・家事です。タスクを書き出すに当たって、自分の着替えはタスクとする必要ないですが、子どもを着替えさせる行為は育児ですから必要なタスクとして書き出します。
②1日の流れに沿ってタスクを順番に並べる
順番に整理することで、普段育児・家事に参加していない夫も「僕が新聞を読んでいたこの時間、妻はこんなことやっていたのか」などとそのタスクの必要性を認識しやすくなります。また、時系列に並べることで夫がそのタスクを担当することとなった場合、次は何をするんだっけと確認できますので役立ちます。
③誰が担当しているかわかるようにする
色や印などを使って、普段はそのタスクを夫婦どちらが担当しているかを示します。わが家では赤が妻、青が夫として表記しています。この時、夫婦で話し合うポイントがあります。
「そのタスクは本当に妻(夫)しかできないことなのか」ということです。今までやってきたからと何も考えずになりゆきで分担を決めてしまうとワンオペも改善されません。こうやって工夫すれば夫でもできるのでは?という視点で話し合いましょう。
④タスクを一覧化(見える化)する
箇条書きでもマトリックスの表でもよいので、書きやすい方法で一覧にしましょう。そして、普段、お互いが目にしやすい場所にセットします。一覧にした紙を壁に貼ってもよいですし、ノートなどで見える化したのであれば置いておく場所を決めておくといった感じです。
これが夫にとって家事・育児のマニュアル代わりになります。妻が風邪をひいて寝込んだ場合など、必要なタスクを時系列で見える化しておくことで、普段妻が担当するタスクを夫が代わって実行する際のよりどころとなるでしょう。
具体例:わが家の育児・家事を「見える化」しました
わが家における平日のタスク一覧を参考にお示しします。なお、わが家ではタスクはできるだけ細分化しました。一つの家事をこなすためにどのようなプロセスが必要か明確にすることを通じて、夫の家事スキル、家事マネジメント能力を向上させるという意図があったからです。タスクの単位をどこまで細かくするかは夫の家事レベルなども考慮して工夫しましょう。
- 妻は育児休業中につき、子どもは家庭内保育
- 子どもは0歳児。つたい歩きやハイハイで移動でき、目が離せない
- 夫の不在時間帯は6:30~19:00頃
- 夫が帰宅した後のルーティーンはお風呂→夕食→寝かしつけ
わが家では、次のようにタスクを分担しています。育休が明けたらもちろん分担を見直すために話し合う予定です。カッコ()は不定期なタスクです。なお、自分の食事や余暇(テレビや読書)、ブログの運営などはタスクの合間に行っています。
平日朝の家事育児
シャッター・カーテンを開ける | ゴミ袋を収集所へ | 夫の朝食準備 | 夫のお弁当準備 |
前日の夕食用食器をしまう | 夫の朝食用の食器洗い | 食後はテーブルを拭く | 服や使用済みタオルなど洗濯物を集める |
子どものオムツ交換 | 子どもの着替え | 子どもを寝室からリビングへ移動 | 子どもの朝食準備 |
子どもに朝食を食べさせる | 妻の朝食準備 | 朝食の食器洗い | 洗濯機を回す |
洗濯物を干す | 家の掃除をする | 子どもの世話をする | 朝食の食器を棚にしまう |
わが家は、夫の朝が早いため、夫が出発する頃に妻と子どもが起床します。そのため、朝食は各自バラバラです。
平日昼間の家事育児
子どものオムツ交換(複数回) | 夕食の献立を考える | 買い物リストの作成 | 買い物に行く | 子どもの昼食準備 |
子どもに昼食を食べさせる | 妻の昼食準備 | 昼食の食器洗い | 洗濯物を取り込む | 洗濯物をたたむ |
洗濯物をしまう | 子どもの遊び相手 | 子どもをお昼寝させる | 昼食の食器をしまう | 郵便物チェック |
夕食の準備 | 子どもに夕食を食べさせる | (子どもを予防接種に連れていく) | (子どもを定期健診に連れていく) | (子どもを地域のイベントに連れていく) |
(衣替えをする) | (ママ友と遊ぶ) |
平日の日中はできるだけ子どもと外に出かける機会を作っています。買い物、通院のほか、誰でも参加できる保育園のイベントや役所や地域のNPOが実施する乳児向けのイベントに積極的に参加しています。
平日夜(夫帰宅後)の家事育児
お風呂に入る(3人で) | 子どもの体を洗う | 子どもを着替えさせる | 子どもの保湿・爪切り |
使った後のお風呂の掃除をする | 子どものミルクを準備 | 子どもにミルクをあげる | 子どもと遊ぶ |
準備した夕食を温めなおす | 夕食の配膳をする | 夕食後のテーブルを拭く | 夫のお弁当箱&夕食の食器洗い |
夕食の余りを冷凍する | シンクの掃除をする | ゴミを集める | ゴミ箱に新しい袋をセットする |
加湿器をセットする | 子どもを寝室へ移動させる | 子どもを寝かしつける | 家計簿を付ける |
部屋を片付ける | (靴磨きをする) | 夜泣き対応 |
まとめ・見える化の効果(わが家の場合)
ここまで、ワンオペの現状と要因、ワンオペを脱するために重要な夫婦での意識の共有、意識の共有に役立つ「見える化」の方法について説明してまいりました。
わが家では、やるべきタスクを明確化したことによって夫にとっても家事が取っ付きやすいものとなり、家事スキルが向上しました(したはず)。
また、タスクを細かい単位で見える化したことで次に行うタスクを意識しながら家事をこなすことでスピードアップにつながりました。妻がやるタスクを夫も把握していますのでお互いのタスク間の引継ぎもうまくいくようになりました。
それはつまり、妻の育児家事の負担軽減につながったということです。なお、わが家では見える化したタスクの役割分担は固定化せず、お互いの状況や夫の家事スキルのレベルに合わせながら、柔軟に見直していこうと考えています。
ワンオペ育児・家事からお母さんを救い出すために、まずは夫婦でタスクの洗い出し作業をしましょう。そして見える化をして、夫婦で育児・家事に対して同じ意識を共有しましょう!