不妊治療の基礎知識・病院情報

体外受精の成功率(妊娠率)はどれくらい?成功しやすい方法や病院は?

妊娠

日本での体外受精の成功率(妊娠率)は2016年の調査では約30%(妊娠/胚移植数)と発表されれています(日本産科婦人科学会発表)。

体外受精を検討する人がはじめに考えること、それは「自分と同じ年齢の人が体外受精をして、そのうちどれくらいの人が妊娠しているのか」ということではないでしょうか。

年齢別で見ると妊娠率には幅があります。同じ治療をしても20代と40代との結果はまったく違います。また、体外受精を行う病院によっても異なる結果が見られます。

この記事では、体外受精の年齢別妊娠率を中心に、体外受精でも胚移植の方法で妊娠率がちがうこと、妊娠率の高い病院と出会う方法について紹介します。

この記事は、筆者が患者側の視点から、不妊治療に関心のある方が知っておいたほうがよいと考えるポイントを紹介するものです。筆者は医療関係者ではないため、医療に関する情報を記載する場合は根拠として信憑性のある出典元を補記しております。

体外受精の妊娠率。20代後半で45%、45歳で6%。分子と分母に注意しましょう

妊娠率をみるときに最初に注意することは分子と分母の内容です。不妊治療をする方の目的は「妊娠すること」ではなく「子どもを産む」ことですよね。そう考えると妊娠率の分子(ゴール)を「子どもを産んだこと」とし、分母(スタート)は胚移植数よりも採卵あたりの総治療数でみたいところです。下のグラフで紹介する「生産率」ですね。

しかし、多くの病院で公表しているのは分母を胚移植数とした妊娠率です。体外受精の後、転院するなどして分娩するまで追えない症例もありますから。この記事で紹介する妊娠率も、分子は妊娠数、分母は胚移植数で計算した妊娠率をベースとしています。

妊娠率

(出典元:日本産科婦人科学会 ARTデータブック2016年版(PDF)

若ければ若いほど妊娠率が高いということは容易に想像できますよね。実際にデータもそれを裏付けています。グラフの青線が妊娠率です。妊娠率/総ET、つまり胚移植をした数のうち、妊娠できた数ですね。

グラフによると、年齢30代後半から妊娠率の低下が顕著になっています。「不妊治療を始めるには早い方がよい」といわれる理由がわかりますね。

しかし、40歳を超えても妊娠した実績はあります。グラフの出典元である日本産婦人科学会の資料によると50歳以上の妊娠率は3.2%です。

データはあくまでも全国の平均値です。高齢だからと自己判断で体外受精を断念するのではなく、病院のガイダンス等で実際に話を聞いてみましょう。全国平均を大幅に上回る妊娠率を公表している病院もあります。

もも母ちゃん
もも母ちゃん
体外受精に使われる略称って多いですよね。ART(生殖補助医療)、IVF(体外受精)、ICSI(顕微受精)、ET(胚移植)くらいは押さえておきましょう 

胚移植の方法で妊娠率は変わるの?

体外受精の方法

一般的にいわれる体外受精(IVF)は卵巣から取り出した卵子に媒精(精子をふりかける)するもの、顕微受精は精子1個を卵子の中に注入するものです。そうしてできた受精卵を胚移植(子宮の中に受精卵(胚)を戻すこと)することによって妊娠するわけです。

さらに、胚移植も採卵後すぐに移植を行う「新鮮胚移植」、受精卵を凍結して翌周期以降に移植する「凍結胚移植」があります。分割胚の状態で採卵後2~3日目に移植を行うのが「分割胚移植」、胚盤胞まで培養して5~7日目に移植を行うのが「胚盤胞移植」といいます。(※用語の定義は加藤レディスクリニック「不妊治療の基礎知識」から引用)

新鮮胚移植と凍結胚移植の妊娠率はどれくらい?

移植ステージ別妊娠率

(出典元:日本産科婦人科学会ARTデータブック)

グラフによると、凍結胚盤胞SETの妊娠率が高いですね!35歳でみると(SETとは単一胚移植。1個の胚移植です。多胎妊娠防止のため日本生殖医学会のガイドラインでも推奨されています)

全国平均の妊娠率(一つ目のグラフ)よりも各年齢で5%は高くなっていることがわかります。私も凍結胚盤胞移植によって妊娠することができました。

参考までに、以下のような情報もあります。

受精した後、受精卵が着床前の胚盤胞の状態になるまで、体外で5~7日間培養します。
胚盤胞まで発育しないこともありますが、胚盤胞移植まで至れば着床率は初期胚移植の2倍以上です。特に卵管性の異常のある方や初期胚移植で妊娠に至らなかった方には極めて有効です。(※加藤レディスクリニック「当院の不妊治療」から引用)

もも母ちゃん
もも母ちゃん
グラフでも新鮮初期胚・凍結初期胚移植よりも、新鮮胚盤胞・凍結胚盤胞移植の方が妊娠率は高いですよね!

東京都内で妊娠率の高い病院はどこ?調べる方法は?

医師TheHilaryClark / Pixabay

ここまでに、データによると体外受精は年齢が若いほど妊娠率が高い凍結胚盤胞移植による方法の妊娠率が高いようだということはわかりました。

もも母ちゃん
もも母ちゃん
もちろん自己判断ではなく、自分の状況に合わせて担当医と相談して決めましょう!

妊娠率の傾向はわかったとして、次に気になるのは実際にどこの病院が良いのだろうということですよね。

最近はホームページで実績を公開している病院も多いです。まずは自分の状況(お住まい、共働き)に合わせて、通いやすい病院をいくつかピックアップして調べてみましょう。

実績が公表されていない場合でも、ガイダンス等で教えてくれることが多いです。私は複数のガイダンスに出席しましたが、いずれも妊娠率は教えてくれました。きっと毎回質問されるのでしょうね。

東京都内の病院で、治療実績や出産につながった数を公表している病院について参考にピックアップしました↓

六本木レディースクリニックの妊娠率

2017年の妊娠率は全体的に日本産科婦人科学会の発表している数値を上回っています。特に20代の体外受精の妊娠率は66.7%と高く、40~44歳でも25.7%と発表しています。

こちらの病院は、治療実績だけでなく、料金もオープンで成功報酬制度も採用しています。ホームページが充実していますので、不妊治療の基礎的な知識を学習することができます。

何より病院が新しくエステと間違えるほど綺麗です。人気のあるクリニックですのでガイダンスは完全予約制です。

(出典元:六本木レディースクリニック

はらメディカルクリニックの妊娠率

はらメディカルは妊娠実績をかなり詳細に公表されています。妊娠率だけでなく、採取卵獲得率、受精率、採卵あたりの胚盤胞獲得率、受精卵あたりの胚盤胞形成率、妊娠率、多胎率、流産率などをすべて年齢別に公表しています。該当者が少ない場合は「信頼性が低い数値です」との補記もあってむしろ信頼できます。

妊娠率についても新鮮初期胚、凍結初期胚、新鮮胚盤胞、凍結胚盤胞ごと、さらに胚を1個移植、2個移植の場合と詳しく整理しています。

特徴的なのは、40歳以上の妊娠率が全国平均と比べて高いことです。凍結胚盤胞移植の妊娠率が41~43歳で12.5%、2個移植だと40.7%という結果です。

(出典元:はらメディカルクリニック

加藤レディスクリニック(KLC)の妊娠率

KLCは妊娠率は公表していません。来院の際にお尋ねくださいとのことです。加藤院長のインタビュー記事※によると、2016年にはKLCの治療を受けて4,172人もの赤ちゃんが誕生。国内で生まれた体外受精の赤ちゃんの、実に約1割にあたるということです。国内で体外受精を行う病院は600以上あるなかで全体の1割をKLCが占めるとはすごいことです。

365日休みなく開院し、毎日20人の患者さんが治療をスタートしているということです。憶測に過ぎませんが、毎日20人が治療を始めているということは、毎日20人は体外受精を受けると仮定します。

1年間で体外受精を受ける人は7,300人(365日×20人)と勝手に仮定し、うち4,172人が妊娠。妊娠率は57%を超えますよね。(実際にはこんな簡単な計算ではないはずですが)たくさんの成功事例があることは確かといえます。

もも母ちゃん
もも母ちゃん
しかし、人気ありすぎです…

私は通院したかったのですが、総合的に考えて別の病院(KLC出身の先生が開院したクリニック)にしました。

(出典元:加藤レディスクリニック、記事の内容は、ナーシングプラザ.com(増え続ける高度不妊治療を取り巻く現状・課題、そしてこれから(前編)より)

参考 不妊治療交流掲示板の活用

不妊治療をはじめたばかりですと、病院を調べようにもまず病院がどこにあるかもわかりませんよね。

体外受精を受けられる病院については、日本産婦人科学会の施設検索のページで調べることができます。※日本産婦人科学会施設検索

自分の住む地域から通院できる病院をピックアップにあたり、参考となるのがインターネットの不妊治療交流掲示板の活用です。体外受精を受けている方や卒業された方から病院の情報提供を受けることができます。

身近に病院探しを具体的に相談できる人ってなかなかいませんよね。そんな時に助かります。

ただし、口コミは参考にしても鵜呑みにしない方がよいでしょう。病院の相性はある人には合わなくても、他の人には合うこともあります。


さいごに~妊娠率で病院を選ぶことの注意点~

ここまで体外受精の妊娠率について解説してきました。

しかし、注意したいことは、公表されている妊娠率だけを頼りに病院を決めるのは避けましょうということです。

妊娠率をみるときに注意したいのは、冒頭に説明したとおり、分子と分母にしている数値です。分母が採卵した総治療数なのか、胚移植数とするかで大きく変わります。また、分子を妊娠している場合も、妊娠の判定をどの時点で行うかによって率が変わります。

たとえば、尿検査で陽性と出たら妊娠とするか、それとも胎嚢が確認されたことや、心臓の拍動が確認されたことをもって妊娠を判定するか。分子のとり方によっても妊娠率は変わるのです。

妊娠率をみる場合は、全国平均と比べるために分子と分母を確認しましょう。公表されていない場合は説明会などで質問してみましょう。

そして、妊娠率はあくまでも、病院を選ぶ際のポイントの一つです。ほかにも押さえるべきポイントはあります。重要なのは自分の考え方やライフスタイルに合った病院を選ぶことです。

以下の記事で病院探しのポイントを紹介しておりますのでご覧いただければ幸いです。

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読者の方が良い病院に出会えることを願っております。ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました♪