これから出産を迎える方で「無痛分娩」を検討される方も多いのではないでしょうか。私は無痛分娩を選択したものの、分娩に4日を要し緊急帝王切開となりました。
そんな私でも無痛分娩に対しては、「基本的にはおすすめ、ただしデメリットや副作用などはきちんと理解しておくべき」というスタンスです。
この記事では、実際に体験した視点から、無痛分娩におけるメリット・デメリット、費用、副作用やリスクなどを紹介します。
この記事の内容は、体験談から無痛分娩を紹介するものです。実際の分娩方法の選択にあたっては、担当医とよく相談のうえ、判断いただくようお願いします。
Contents
私の無痛分娩→副作用・合併症に苦しむ
いろいろありすぎたレアケースです。痛い思いをたくさんしました。
- 関西への里帰りしてまもなく、妊娠高血圧症候群で予定日の20日前に管理入院
- 血圧が上がって予定日の1週間以上前に陣痛促進剤を使って急きょ分娩に
- 分娩台に3日乗っても産まれず。。分娩4日目の朝、母体が危険な状態となり緊急帝王切開に。なかなか産まれない原因は「難産道強靭症」
- 硬膜外麻酔でまれに起こる副作用、激しすぎる頭痛に苦しむ。。頭痛地獄は計6日間。
- 術後は39度の高熱・・・
- 激しい後陣痛。産後の子宮収縮剤の投与と後陣痛があいまってさらなる激痛に。。
- 術後は頭痛で寝たきり→腸が動かずあやうく腸閉塞!
- 足のむくみがひどくパンパン!動けないから余計に→あやうく肺血栓塞栓症に!
以上、フルコースでした。思い出すだけでおなかが痛くなりそうです。
そもそも無痛分娩とは?
経膣分娩の際の痛みを、麻酔によって和らげる方法です。シンプルですね。
私が分娩を行った病院では、痛みを完全に除去しすべての感覚を奪ってしまうのではなく、ある程度の圧迫感は残すものでした。
いわゆる和痛分娩ですが、病院の説明ではあくまでも無痛分娩でしたので、この記事でも無痛分娩と称しています。
しかし、当然ながら、痛みへの感受性や麻酔薬の効果には個人差があります。十分に満足されない場合もあるということは認識しておく必要はあります。
無痛分娩の対象となるのはどんな人?
無痛分娩を受ける人には2種類います。
- 無痛分娩を希望する人
- 医学的に無痛分娩が必要な人
私は、もともと無痛分娩を希望していましたが、妊娠高血圧症候群と診断されたため上記の②にも該当しました。
通常、分娩時には痛みやいきみから血圧が上昇します。無痛分娩は麻酔によって血圧をコントロールできるという側面もあるため、医学的に必要な人には推奨されています。
麻酔の方法。一般的には硬膜外麻酔
麻酔は「硬膜外麻酔」を用いることが一般的です。背骨にぷすっと注射針を刺し、脊髄の硬膜外腔というところにカテーテルを挿入します。そこにポリエチレンチューブをつなげ、麻酔薬を注入するものです。
硬膜外麻酔については、以下の記事で詳しく紹介しております。あわせてお読みいただければ幸いです。
無痛分娩のメリット
お産の痛みを緩和
無痛分娩の最大のメリットは痛みの緩和ですよね。
ただし、麻酔をするタイミングは病院の方針による場合があります。陣痛後、ある程度子宮口が開いてから麻酔を使うという病院もあるでしょう。
なかには、自然分娩から始め、どうしても痛みに我慢できなくなったら無痛分娩に切り替えるという方法が可能な病院もあります(あらかじめ無痛分娩の説明を受け、同意書等にサインしておく必要があります)。
無痛分娩を検討しているのであれば、分娩をする病院を選ぶにあたって、麻酔を使うタイミングについて確認しておきましょう。
産後の回復が比較的早い
一般的に陣痛時には身体中いろんなところに力が入りすぎるなど、産後は身体中が痛くなります。
無痛分娩は、痛みによる体力の消耗を抑え、産後の復帰をスムーズにすると言われています。
しかし、私の場合はもろもろの合併症で通常よりも長く入院しました。誰にでもあてはまるというわけではありませんね。
血圧をコントロールできる
妊娠高血圧症候群の方には無痛分娩が推奨されると書いたように、陣痛の痛みによる血圧の上昇を抑え、安定した血圧を維持することができます。
私の場合は、陣痛が強くなると、痛みに耐えようと血圧が180を超えることもありました。ですが麻酔をすると痛みがすっ・・・と和らぎ、血圧も劇的に下がっていきました。
同じように妊娠高血圧に苦しむ方には本当におすすめです。
結果的に帝王切開となった私でも無痛分娩をおすすめする理由はここにあります。
分娩中は酸素濃度・血圧・脈拍を常時管理されるのですが、血圧が見たこともない値まで上昇した時は、このまま脳梗塞にでもなってしまうのではと恐怖に襲われましたから。
麻酔で痛みを和らげることで身体的にも精神的にも落ち着いて分娩に臨むことができます。
緊急に帝王切開が必要となる事態などに対応しやすい
分娩経過中に母子のどちらかが危険な状態となった場合、すぐに帝王切開の措置がとられることが考えられますよね。
無痛分娩の場合は硬膜外腔に既にカテーテルが入っていますから、スピーディーに対応できるというわけです。
とはいえ私の場合は、帝王切開に際して脊髄麻酔も併用した(迅速で確実な鎮痛が期待されるため)ため、ぶすぶすと何度も痛い思いをしていますが・・・
無痛分娩のデメリット
無痛分娩の追加費用がかかる→でも、私の自己負担は4万円
一般的に自然分娩+10万円以上となることが多いようです。私が入院した病院では、プラス10万円でした。無痛分娩を行うこと自体に健康保険は適用されません。
なお、私の場合は緊急帝王切開となったことから、一部は健康保険の適用対象となりました。それでも入院時の差額ベッド代やら何やらで60万円近くかかりました。
なお、私は妊娠高血圧症候群と診断され出産の1週間以上前から入院しました。
医学管理の下での入院のため、入院治療は健康保険の対象になりました。また、任意で加入していた医療保険で入院日額5千円と手術給付金の対象になり14万円が支払われました。これも通常の分娩ではもらえなかったものですね。
最終的な自己負担は、60万円-42万円(出産一時金)-14万円(医療保険)=4万円ほどでした。
まれに麻酔の副作用あり→私は硬膜穿刺後頭痛に…
硬膜外麻酔により、まれに起こる副作用として以下の点について、事前に説明を受けました。
- 母体の血圧低下
- 頭痛 ← 凄まじい痛みが待っていました
- 背部痛
- 呼吸苦
- めまい 等
私の場合、頭痛(と首痛)がひどかったです。
硬膜穿刺後頭痛という副作用ですね。ごくまれに硬膜外麻酔を行う際に硬膜に傷がつき、穴があいてしまう場合があります。そこから脳脊髄液が漏れてしまうことによります。脊椎麻酔でも起こりえる症状です。
手術後に脳脊髄液がこの時の針穴から漏れ、脳圧が下降し、そのために激しい頭痛が生じることがあります。(出典元:京都市立病院脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の合併症・偶発症より)
普通は穴は自然に治癒しますので数日に治るといいますが、ブラッドパッチといって自分の血液を硬膜外腔に注入してかさぶたのようにして穴をふさぐ方法もあります。
治療法としては、腰椎の同じ部位で硬膜外腔まで針を進め、本人の血液を注入し、凝血により穴を塞ぐ『ブラッドパッチ』といわれる方法がもっとも有効ですが、通常の鎮痛薬、輸液などで十分なことも多いようです。(出典元:京都市立病院脊髄くも膜下麻酔と硬膜外麻酔の合併症・偶発症より)
麻酔をした翌々日から激しい頭痛で立位、座位ともに無理。車いすも駄目でストレッチャー移動。産後も歩くことができず、治らなかったらと思うと絶望感がこみ上げてきましたが、産後3日あたりからころっと良くなっていきました。
この頭痛への処置としては、痛み止めと輸液(生理食塩水)でした。
同じように頭痛が起きてしまう方もいるでしょう。でも大丈夫です。人間には自然治癒力があります。
きっと、ある日突然あれって思うほど簡単に起きることができるはずです。
まったく痛みがないわけではない。そこそこ痛かったです
私の場合は陣痛促進剤を投与され、お腹の張り具合をセンサーで管理しながら麻酔を入れるタイミングを検討されていました。痛くなったら教えてとも言われました。
おなかの張りが強くなってくると、やはり陣痛です。痛いです。でも初めてなのでどこからが痛いのかもよくわかりません。
お腹の張りをチェックした先生がひとこと。
そこから麻酔を投与されました。
痛みの感受性は人それぞれです。痛いと思う人は無痛分娩でも痛いということですよね。
無痛分娩のリスク、事故は?
悲しいですが、無痛分娩の際の麻酔が原因の死亡事故も起きています。
2016年にも大阪府のクリニックで起きた事故では、硬膜外腔に入るべき麻酔薬が誤ってくも膜下に入ってしまい、薬が効く範囲が広がりすぎました。「全脊椎麻酔(トータルスパイナル)」という状態です。
麻酔の範囲が広がりすぎて何が危険かといいますと、呼吸に影響するからです。呼吸を司る横隔神経まで薬が効いてしまうと自分で呼吸することができなくなってしまいます。
ただし、トータルスパイナル自体、滅多に起こることはありません。万が一起こったとしても、必要な救命措置をとれば母子の命は守られると言われています。
事故が起こったクリニックでは、トータルスパイナルに気づくタイミングが遅れたこと、必要な救命措置をしなかったことが原因です。
こういった事故を耳にすると、「無痛分娩は怖い!危ない!」と思ってしまいがちですが、無痛分娩それ自体が危ないわけではありません。
無痛分娩を行うに適切な管理のできない病院で無痛分娩を受けることがリスクということです。
トータルスパイナルに陥り、呼吸が停止しているのは麻酔が効いているせいです。麻酔が切れるまで、病院が適切に蘇生(呼吸と循環)を行えば母子の命は守られるということです。
過剰に無痛分娩を怖がったり批判したりするのではなく、病院の管理体制が適切かどうかを確認しましょう。
事故内容の出典元:麻酔科医情報site 無痛分娩の事故・ニュースのこと:麻酔科医の観点からの検証1
さいごに
無痛分娩を選択しようとして色々調べだすと、事故やリスクなどの情報にばかり目がいって不安になりがちです。
実際に経験した私の印象としては、無痛分娩それ自体のリスクはそれほど高くないと感じました。
4日に及ぶ難産でしたが、担当医の先生や助産師さんが24時間体制で私の状態を管理し、何か問題があればすぐに処置をしてくれる体制が整っていましたから。
前章で申し上げたとおり、重要なのは、無痛分娩を行う医療機関の管理体制です。特に麻酔の管理ですね。
麻酔のカテーテルを挿入する際の処置や分娩中の麻酔の量の管理などを適切に管理できる病院であることが大事です。
それをクリアした病院であれば、あとは無痛のメリットを享受するだけです♪
私のようにまれに副作用が起きてしまうこともあるでしょう。しかし病院は副作用に対しても適切に処置してくれます。万が一、腸閉塞となったり血栓ができてもすぐに処置できるよう準備していましたから。
ですから、無痛分娩を選択する!と決めた方は安心してください。
ぜひ、安全で安心な無痛分娩で元気なお子さんを産むことを祈っております。ここまでお読みいただきありがとうございました。
記事を書くにあたって参考にしたページ
順天堂医院での無痛分娩について https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/common/img/masui/pdf/mutsubunben.pdf